「これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。
」ここには「風の又三郎」をはじめ、「セロひきのゴーシュ」「猫の事務所」「ざしき童子のはなし」「なめとこ山の熊」「グスコープドリの伝説」など、ふるさとの山や川に深く結ばれた作品を中心に十九篇を収めた。
宮沢賢治の童話はその詩とともにきわめて特異なものである。
「あなたのすきとおったほんとうのたべもの」になることを念じて書かれた心象的なこの童話の一つ一つは、故郷の土と、世界に対する絶えざる新鮮な驚きのなかから生まれたものである。
どの一篇もそれぞれに不思議な魅力をたたえた傑作ぞろい。
「視ること、それはもうなにかなのだ。
自分の魂の一部分或いは全部がそれに乗り移ることなのだ。
」作者の創造の秘密をこれほど明らかに語るものはない。
こうして自我と対象とを一分の隙もなく合一させた瞬間に、梶井の生命は閃光を放って輝く。
特異な作品を残して夭折した作家の全貌を伝える短篇集。
地獄のような蟹工船から湧き起る労働者の反抗の叫びを描いて、支配階級にショックを与えた『蟹工船』と、いわゆる三・一五事件を大きな時代のうねりの中にとらえ、その後のプロレタリア文学に一つの方向をさし示した『一九二八・三・一五』。
ともに多喜二の代表作であるとともにプロレタリア文学の古典である。
太宰治が短篇の名手であることはひろく知られているが、ここに収めた作品は、いずれも様々な題材を、それぞれ素材に適わしい手法で描いていて、その手腕の確かさを今更のように思い起こさせる。
表題作の他、『東京八景』『女生徒』『きりぎりす』『駈込み訴え』『魚服記』『ロマネスク』『満願』『八十八夜』を収録。
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